STARVINGMAN 「My Demo EP」インタビュー

2015/04/07

とてつもなくポップで人懐こいメロディーとは裏腹に強烈なメッセージが乗っかったそのサウンドは、どこまでメロディックであり、またはハードコアであり、なによりパンクであるとてつもない新人がデビュー音源をカセットにてI HATE SMOKE TAPESよりリリース!今回はバンド結成から今作「my demo ep」制作までの話をメンバーに聞いた。
INTERVEW:OSAWA17

■マーティー君の前身バンド(SORRY FOR A FROG)解散からの話も交えつつ…、まずSTARVINGMAN結成したのはいつですか?
マーティ:おれとヨシが最初スタジオ入ったんだけど、その時が2013年の・・・
ヨシ:7月とかそんくらい。

■解散から2年くらいあいてるんですね。STARVINGMANやるっていうアイディアとか、こういうバンドで動き出そうっていうのはソーリー解散してからすぐにあったんですか?
マーティ:ソーリー解散した時は全く考えてなかった。

■バンドをやろうとは思ってました?
マーティ:うん、思ってた。でもそれはパンクじゃなくて、60'sのモータウンとかポップス~ロックとか70'sパワーポップなんかを自分なりに消化した感じのバンドでこれからはやっていこうって思ってた。

■その2年間の間にやりたいことが変わっていった感じなんですかね?
マーティ:変わったというか、それはそれでやるんだけど、別のバンドでパンクをやりたくなった。ソーリー解散してからは、速くてうるさいのはもうやらないだろうと思ってたんだけど、・・・まあやめられないのかな。笑

■ヨシ君と出会ったのはいつ頃なんですか?
マーティ:2002年とかかな。
ヨシ:二十歳過ぎくらいでしょ。

■その時はお互い違うバンドで?
マーティ:ソーリー結成してすぐくらいで、まだバンド名がソーリーになる前だね。
ヨシ:当時おれがやってたバンドが新宿アシベでライブしてたんだけど、その時いきなりMD渡してきて。「かっこよかったです!」って。ほんとかどうか知らないけど。
マーティ:そのライブ自体はあんまり覚えてない。笑
ヨシ:それで話してみたら同い年だし、お互い栃木(出身)で、意気投合というか。で、その後にやったバンドでよくソーリーと一緒にやって。合同企画もやったし。あとヘルプで叩いたし。

■ソーリー解散してヨシ君に声掛けたきっかけってなんですか?
マーティ:まあソーリーでヘルプで叩いてもらった時に、おれの好きなタイプのドラマーだと改めて思ったんだよね。だからいつか一緒にやりたいと思ってて、そんでソーリー解散前の新宿ロフトの時「よかったら見にきてよ~、そしていつか一緒にやろうぜ~」みたいなメールをした気が。だからSTARVINGMANやろうと思った時、真っ先にヨシが浮かんで声を掛けたんだよね。

■その時ヨシ君はバンドやってなかった?
マーティ:Misled Baldsっていうバンドを脱退した後かな。
ヨシ:そうだね。

■なるほど。っていうかマーティ君、パンクはもうやらないってほんとに思ってたんすか?
マーティ:うん、思ってたよ。

■…にしては、STARVINGMANはサウンドはもちろんなんすけど、歌詞の内容ももろパンク的だし・・・
マーティ:ははは。まあ歌詞に関しては、3.11もあって・・・。そもそもおれ25歳くらいまでは社会に対して本当に無関心だったし、政治なんて全く興味がなかった。
選挙も行ってなかったし。で、ソーリーやってた頃、ドラムのタクミが時事ネタの話をする時おれはついていけなくて、その時タクミに言われたんだよね。
「もっとニュースを見たほうがいい。朝の30分だけでいいから。」
って。じゃあとりあえずニュースを見てみるかと。
それで朝の少しの時間、テレビでニュースを見るようになって、少しずつだけど、今世の中で何が起きているのかってのを知り始めて。
すると政治だとか社会のことって、語弊があるかもしれないけど自然と面白く思えたんだよね。現実に起こってることだし。
当時は麻生政権の時かな、あの人ほんと色々凄かったし。

■漢字読めなかったりとか。笑
マーティ:そうそう。本音ポロリの失言多かったし、こんな人が総理大臣なのかって思って。ニュースを見れば見るほど政治に対する不信感は募って、当時はマスコミも政府をガンガン叩いてたよね。今ではマスコミも政府に牛耳られてるとこ結構あるけど。
で、しばらくして3.11があって。あの時は無力感に苛まれて色々悩んだけど、同時に政治に対する怒りもあった。
おれ思ったこと感じたことはすぐにメモを取ってるんだけど、歌詞はそのメモを基にして書き上げたんだよね。
サウンドもそういった“怒り”から生まれたメロディーもあるかもしれない。

■明らかに変わったなと思うのは、日本語詞になったじゃないですか。英詞も混ざりつつ、結構オリジナルな歌詞だなと思うんすけど、このストレートな日本詞で歌おうと思ったのは?
マーティ:それは、英語が喋れないから。笑
ヨシ:英語下手だしね。

■あんだけ前のバンドで英語の曲歌っといて・・・笑
マーティ:ははは。逆に、なんでソーリーは英語詞だったんですか?って質問のほうが的を得てると思うもん。笑
ソーリーの時の歌詞って、日本語で書いたものを翻訳できる人にお願いして訳してもらったりしてたんだよね。

■へー!そうだったんすか~。
マーティ:自分で翻訳サイトで訳したのも何曲かあるけど、文法がおかしかったりするし、語呂合わす為に編集して言いたいことの何割か削って結局妥協したり、いいことなかったかも。まあソーリーの時なんで英語だったかっていうのは・・・
ヨシ:まあ流れでしょ。
マーティ:そうだね、流れ。あのジャンルの“標準”だったからね。例えばHi-STANDARDは多くのフォロワーを生んだけど、ハイスタが日本語で歌ってたとしたら、その多くのフォロワーは果たして英語で歌っていたのか?と。 
確かに所謂メロディックパンクはUK、USが生んだものだから、英語が一番しっくりくるっていうのはあるけどね。
でも日本人が公用語じゃない英語を歌詞にするってのはやっぱりパイオニアの存在があって今に至るんじゃないかな。
STARVINGMANは歌詞のメッセージを大事にしてるから、歌ってて気持ちの込められる日本語でやろうと思ったのもある。

■うんうん。以前、STARVINGMANに「Counter」でアイヘイトのオムニバス参加してもらったじゃないですか。で、日本語で歌ってるってのはわかったんすけど、日本語っぽくもない感じに聴こえてなんかすごい良い感じの落としどころを見つけたなっていうか…
ヨシ:歌いまわしが独特かな?

■そうっすね。あと日本語ってなると、歌にすると“強く”出ちゃう部分があるじゃないですか。聴いててもそれがうまく隠れてるし英単語のチョイスもわかりやすいから、すごい聴きやすさもあって。で、今STARVINGMAN試聴で一曲上げてるけれど、あれだけで判断してほしくないっすね〜。歌詞カード是非見てほしいっすよね。なんかSTARVINGMANって、曲と歌詞がワンセットになってるバンドだなと。
マーティ:うん、そうだね。



■話ちょっと戻りますけど、マーティ君が社会に関心を持つようになって、首相官邸前のデモとか、新大久保とか、行ったと思うんですけど、その流れで聴いてる音楽の変化とかありました?
マーティ:ある。プロテストソングを掘り下げたかな。ウディ・ガスリー、Billy Bragg、Nina Simone、ざっくり言うとそのあたり。RCサクセション、SOUL FLOWER UNIONなんてちゃんと買い集めるようになったのは実は震災以降で。
プロテストソングとかって、遠回しなものもたくさんあるけどストレートなものもあるでしょ。
聴く人のなかには、なんでこんなに怒ってるのか、誰に対してなのかって疑問に思う人もいる。
例えばなんでサッチャーはワーキングクラスの人達からあんなに嫌われていたんだろうとか、何も知らなかったわけよおれは。疑問を抱くきっかけにはなったよね。

■歌詞に関して、メンバーで話し合ったりします?
マーティ:するね。
ヨシ:するする。
マーティ:おれとヨシは結構意見が違うんだよね。

■それはおもしろいっすね。え、今回のテープの中で言ったら?
ヨシ:わかりやすいのはBe Clean Be Greenかな。これちょっと歌詞変えようよみたいに言った。
マーティ:最初はね、もっと押し付けがましかったの。でもヨシに「ちょっとこれは強すぎるんじゃないか」って言われて、言葉を弱くしたんだよね。
ヨシ:これでもね。歌詞読んだ人は「マジで?これで?」ってなるよね。
マーティ:そうだね。笑
ヨシ:オレは、もっと自分でちゃんと調べて考えた上で「No」って言うならいいんだけど、押し付けられたりというか、みんな「No」って言ってるからオレも「No」っていうのは違うなって。「Counter」もそうだけどもっと自分で考えて、まあ(ヘイトスピーチが)良くないことはわかるけどなんでダメかとか。実際はどうなのかとか。そういうのを考えてほしい。

■周りが言ってるからそれに合わせるんじゃなくて。
マーティ:うん。たぶんそういう人も結構いると思う。感情だけが先走って。
ヨシ:今まで日本が繰り返してきた、流行りみたいなもんで終わって。

■これでちゃんと自分で調べて知っていくきっかけになってほしいってことすね。
マーティ:例えばヨシがオレと全く同じ意見を持ってたとして歌詞ももっと言葉強くなってたら、攻撃的な印象しか持たれないかもしれない。

■すごいいいバランスを取れてるんですね。
マーティ:そうだね。ヨシに指摘されて歌詞を直して結果的にすごく良くなったね。問題提起って形にはなってる。でもまあこれでも「ただの押し付けだ」と思う人も多いかな。
ヨシ:オレ寄りの人からしたらね、そもそもお題がね。でもそういう人は考えてるからね、いいんだよ。
マーティ:ああ、そうだね。まあうちらが考えてほしいって思ってる人はつまり「何も知らない人」に対して。自分がそうだったからさ、「変われる」ってことをオレ自身が知っているし。自分と同じ考えの人の共感を得て自己満足、じゃダメだと。
問題提起をするっていうのは誰でもできるし簡単だけど、問題提起さえしない空気があるでしょ。所謂「サイレントマジョリティー」がたくさんいるわけで、異議なければ支持してると同じだなんて都合よく解釈されるのは納得いかない。
だから、きっかけを作れるなら、「オレはノーだ。君はどうだ?」っていう問いかけをしたい。君がイエスでもそれが考えた上でのイエスなら、何も考えないよりいいと思ってるよ。
今の日本は2人に1人しか選挙に行かないって投票率で、それは恥ずかしい、っていうか勿体無いことだと思うし。もちろん過去の自分に対しての自戒を込めてね。

■そこを考えるだけで、自分の生活も変わりますよね。
ヨシ:ってか、どーなんだろ。これを聴いて政治とか社会のことに関心を持ち始める人っているのかな?これ聴いてる人はすでにわかってる人達なんじゃない?
マーティ:う~ん・・・。

■なんか、政治に関心をって言葉がカタイし、強すぎる。なんていうか・・・「生活に興味を持つ」みたいなニュアンスっていうか。自分の日常の事ですからね。
ヨシ:政治に関心がないっていうのがすでにおかしいんだよね。生活と一体のはずなのに。関心を持ってほしいっていうか。

■関心というか、疑問を持つことがすごい大事だなって思いますね。
マーティ:なるほど・・・。もう何年も前のことだけど、FAT MIKEがPunk Voterってのを立ち上げて、当時はそれを疑問に思ったことがあったの。
なんでパンクと選挙がリンクしてるんだろうって。当時はパンクのこと何もわかってなかったし、社会に対しても無関心だった。
ただNOFXはかっこいいからCDを買い続けててさ。歌詞もろくに見てないのにね。V.A.「Rock Against Bush」だってあんなあからさまなのにただ聴いてただけ。パンクはそもそも・・・って話だし。
だから疑問に思ってもそれ止まりじゃなくて、その先に行かなきゃなんだよね。今の時代簡単に調べられるし。情報は錯綜してるから、自分で見極めなきゃいけないけどね。

ヨシ:結局、知的好奇心があるかないか・・・それ言ったら元も子もないか。

マーティ:何かに疑問を持っても・・・例えば消費税が上がったり物価が上がったりしてるけど、チクチク少しづつだと実感が湧きにくいじゃない。

ヨシ:それは日本だからじゃない?食うのに困ってないじゃん。アメリカだとファミリーで明日食う食べ物がないみたいな、格差が相当あるわけでしょ。アメリカだったらそういう貧困問題で大勢の人達がワーっとなって立ち上がるけど、こっちは「いつかなるぞ」って言われてもさ、わかんないよね。

マーティ:うーん、確かにね。アメリカに比べれば格差は今は大したことないかもしれないけど、日本も生活保護を受けている世帯がどんどん増えてるのが現状で、でも身内や周りの人がそうじゃないとこれまた他人事になるよね。恐らくこれからも格差は広がっていくけど、自分には関係ないやで終わるから選挙に行かない人が多いのかも。

ヨシ:・・・危機感。危機感を持てって言われてもね・・・。例えばテロが日本で起きるでしょ、起きる可能性が高くなったでしょ。地下鉄サリン事件だって20年経ったけど、実際あんなことが起こってるからね。

マーティ:そうだね、昔話みたいになっちゃってるけど。

ヨシ:興味を持てって言い続けるしかないかな。

マーティ:でもそれで引いちゃう人もいるしなあ。興味を持てって言うのはいいんだけど・・・。おれは、「デモに来て」とか人に求めたりはしないのね。ただ選挙行ってない人は、せめて選挙には行こうよって言い続けたい。今の政府は憲法改正しようとしてるけど、憲法がどう変わるかによって生活がガラっと変わるよね。そういうことも、知れば自然と足を運ぶかと思う。

■だから、興味を持たせる為の、ポップな曲じゃないすか。
マーティ:あー、そうか。

ヨシ:多くのバンドを知ってるわけじゃないけど、うちらみたいな音でここまでストレートなこと言ってるバンドはいないのかな。曲聴いて気に入ってもらえたら、歌詞見て疑問に思うなりしてさ、1人でも多くの人が興味を持ってくれたら嬉しいよね。

(ここで仕事を終えたAIRDAが現れる)

AIRDA:遅くなりました。

マーティ:じゃあ最後、AIRDAから今後の意気込みを。

AIRDA:最初はね全然、ずっとこのバンドをやるって頭になかった。マーティはバンドをやったほうがいいと思ってたから、やるって言われて、じゃあ手伝う。って感じでサポートしてたから、歌を歌うとか、メロディックをやるとか、これっぽっちも考えてなかった。
とりあえず手伝って、それですげーいいベースが見つかって、いいバンドになるんだろうなあって思ってて。でも結果的に楽しくて入っちゃった。
意気込みは、そうだな・・・終わった後イエーイっておいしいビールを飲めるようなライブをやりたい!

マーティ:そうだね。それが続けれたら最高だね。



STARVINGMAN / My Demo EP [TAPE+MP3]

A-side
1. Train Train Train Train
2. Counter
3. She
4. Yeah Yeah

B-side
1. Make Me Laugh
2. Be Clean Be Green
3. Amata No Uta